「地震大国」と呼ばれるほど、地震が多い日本。気象庁は、2021年に震度1以上の地震が2424回も発生したと発表しました。
地震は、住宅や人に大きな被害を及ぼします。そのため私たちは、少しでも安心して暮らせるように、地震に強い家づくりを行わなければいけません。
そこで注目されるのが「耐震性能」です。
今回は、耐震性能を考えた家づくりについて考えていきましょう。まずは、耐震性能とは何かを見ていきます。
住宅の耐震性能とは?
耐震性能とは、地震に対する安全性を示すものです。言葉の通り、高めることによって地震の揺れに耐える力が強くなります。
建築基準法にも定められており、
・震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷ですむ
・震度6強~7に達する程度の大規模地震でも倒壊は免れる
上記の基準を守らなければいけません。
また、耐震性能は3つの等級に分かれています。
3が最も高い等級となり、住宅で例えると等級1は一般住宅に適用。等級2は病院や学校など、等級3は消防署や警察署などに適用されるレベルです。
なかには「等級1では心配だから、等級3にしよう」と思う人もいるかもしれません。しかし、暮らしている地域によっては難しい場合もあります。
例えば、積雪のある北陸や東北地方。この地域で等級3の住宅を建てようとすると、間取りに条件がつくことがあります。
「ここに窓が欲しいけれど、耐震性の問題から設置できない」など、柱や窓の位置に制限がかかるのです。
家づくりを行う際は、耐震性と間取りのどちらに重点を置くかよく考えましょう。
計算しなくても家は建てられるって本当?
本来、建築物を建てる際は、確認申請をする必要があるため構造計算(※1)を行います。
しかし、2階建て以下の木造住宅には構造計算の義務がありません。
これは、安全性を保つために建設基準法に仕様規定(※2)があり、一般的な木造2階建て住宅が「4号建築物(※3)」に該当することが理由です。
また、仕様規定が耐震等級1を基準としていることも関係しています。
とはいえ、4号建築物であっても安全性を確かめる必要はあります。
その際に、簡易計算を行う業者が多いのですが、確認内容が
・壁量の確保【壁量計算】
・壁の配置バランス(偏心率)【四分割法】
・柱の柱頭柱脚の接合方法【N値計算法)
の3項目と、構造計算よりはるかに簡単なものとなっているのです。
あまりの簡易さに、建築分野を専門とする教授や有識者が「不適切な設計が増加するのではないか」と問題視しています。
住宅会社に相談する際は、安心して暮らせる耐震性の高い家づくりを行うためにも、「簡易計算ではなく、構造計算(許容応力度計算 ※4)をしていますか?」と確認しましょう。
(※1)構造計算:建築基準法で定められている条件を、満たしているか確認するために行う計算。
(※2)仕様規定:安全な建築物をつくるために必要な性能を、保つことを目的に定められた
(※3)4号建築物:建築基準法で定められた条件に該当する建築物(2階建て以下、500㎡以下の木造住宅)で、建築士が設計してもの
(※4)許容応力度計算:基礎の構造安全性や風荷重など、様々な構造を細かく計算し検討する。簡易計算より信頼性が高い。
耐震等級2・3の住宅を建てる場合は構造計算が必要
前章で、仕様規定を満たした2階建て以下の木造住宅であれば、構造計算はしなくても良いとお伝えしました。
しかし、耐震等級2または3の場合は構造計算が必要です。
建築基準法で定められた仕様規定では、耐震等級1が基準となっており、構造計算は免除されていました。
しかし等級2は、等級1の1.25倍、等級3は1.5倍の強度が求められます。
さらに、仕様規定以上の項目があり構造計算でしか確認できません。
そのため、耐震等級1に用いられる簡易計算では対応しきれないのです。
そして、注意しなければいけない言葉として「等級2 “同等”や等級3 “同等”」があります。
実はこの言葉、建築基準法には1度も登場しません。つまり法的な力はなく、建築会社独自の評価や証明になるのです。
酷い場合は壁量のみ1.25倍や1.5倍とし、“同等”と表現している可能性もあります。
「等級を上げる=壁量だけを増やす」と言うことは決してありません。必ず計算の有無を確認しましょう。
このような建築会社に家づくりを依頼してしまうと、本来受けられるはずであった住宅ローンの金利待遇や地震保険の割引などが受けられなくなる可能性も出てきます。
構造計算は精度の異なるものが2種類ある
等級2以上を取得したい場合は、品確法の住宅性能表示制度(※)による耐震等級設計(性能表示計算)と建築基準法による許容応力度計算の、どちらかを行う必要があります。
そして性能表示計算では、性能表示制度で定められた仕様通りに耐震設計を行えば、許容応力度計算と同等の耐震設計ができます。
時間短縮や計算にかかる費用を抑えられる点は魅力的ですが、細部まで計算を行う許容応力度計算の方が、より厳しい判断基準となっており地震に強い家がつくれるのです。
構造計算を行うためには費用と時間がかかります。
なかには「なるべく節約したい」や「お金をかけてする必要があるのか」と思う人もいるでしょう。
しかし、地震を含む自然災害は、いつ起こるか分かりません。命や財産を守るためにも、耐震性を考えた家づくりは大切です。
家を建てる際は、しっかりと構造計算も行いましょう。
(※)住宅性能表示制度:国土交通大臣によって登録された第三者機関が、客観的に住宅性能を評価し表示するための基準と手続きが記されている
<参考文献>
令和3年度(2021年)の地震活動について|気象庁
(https://www.jma.go.jp/jma/press/2201/12a/2112jishin2021.pdf)