一級建築士 つるみーの     家づくりコラム

2022.06.14

家を建てる前に知っておくべきこと

家づくりを行う際は気密性も意識しよう

気密性

快適な家づくりのために、注目すべきポイントとして「断熱性」や「気密性」が挙げられます。

とくに「断熱性」は、聞いたことのある人も多いのではないでしょうか。

しかし、四季によって気候が変化する日本では、断熱性だけではなく気密性も重要です。

 

本記事では気密性が何かを知るために、基礎知識や注意点・気密性と関りの深い「窓」についてまとめました。まずは、気密性とは何かを見ていきましょう。

 

 

住宅の気密性とは?

住宅の密閉性がどのくらいか

気密性とは、「住宅の密閉性がどのくらいか」「家に隙間がどれだけあるか」を表す言葉です。

「隙間風」という言葉があるように、家の壁に隙間が多いと風が入り込み室温を保ちにくくなります。

 

そのため、いくら暖房を効かせても暖かくならなかったり、冷房の冷気が外に逃げてしまったりするのです。

 

それだけではなく、電気代の上昇や環境負荷にも繋がります。

これ等の問題を解決するために、気密性の高い家づくりが大事だと言われています。

 

 

■気密性を表すC値

そして、気密性の高さを表す値がC値(相当隙間面積)です。

床面積1㎡あたりの隙間面積を表しており、値が小さいほど気密性に長けています。

計算方法は、隙間の合計面積(㎠)÷建物の延床面積(㎡)です。

 

例えば、隙間の合計面積が400㎠、延床面積が100㎡である場合。計算式は、400㎠÷100㎡=4.0㎠/㎡となります。

 

以前は地域ごとに、基準値が下記の数値を下回るように定められていました。

しかし、2009年の省エネ法の改正によりC値の項目が削除されたため、現在は基準値が設定されていません。

省エネ法

ただし、計画された給気口から新鮮な空気を取り込む計画換気を行うためには、C値5.0だと17%しか取り込むことができません。

C値1.0で50%、0.5で66%のため、1.0以下が望ましいだろう。

 

 

■高気密高断熱の両方を満たして初めて性能を発揮する

 

気密性を高めるためには、断熱性にも注目する必要があります。

気密性能は外気からの影響を受けにくくし、断熱性能には内側の熱を逃がさないようにする働きがあるためです

この2つが揃うことによって十分な性能を発揮し、快適な住環境をつくりあげます。

 

 

 

気密性は設計時にはわからない

気密測定

気密性は断熱性能や耐震性能とは異なり、住宅を1軒ずつ実際に測定します。

 

この検査方法を「気密測定」といい、測定することによって性能の良し悪しがわかるのです。

通常、1回目は建設中の断熱工事が終わった頃に、2回目は完成後に測定します。

 

もし中間測定の際に数値が良くない場合は、気密性能を上げるために職人さんが修正を行います。

このように、2回測定することによって気密性の向上に繋がるのです。

 

ここまでの話から、気密性がいかに重要かお分かりいただけたのではないでしょうか。

そして、高断熱高気密で暮らしやすい環境にするためには、気密性の高い窓の選択も大切です。

 

 

 

気密性の高い窓とは?

熱の逃げる割合が大きい場所

家の中でも窓は「熱の逃げる割合が大きい場所」で、夏は約70%、冬は約50%の熱が窓から出入りします。

そのため、気密性の高い窓を選び、熱を逃げにくくする必要があるのです。

窓は種類によって気密性能がことなり、下記の順に高くなっています。

 

 

 

1.FIX窓

FXI窓

FXI窓は壁に直接はめ込まれており、開閉できないタイプです。

換気目的ではなく、光を多く取り入れるために設置されます。

 

大きさや長さ・形と種類も豊富なため、取り入れるとデザイン性の高いおしゃれな部屋になるでしょう。

同時に、花粉の侵入や落下事故も防げます。

 

しかし、

 

・換気ができない

・窓の外側を掃除する際に手間がかかる

・吹き抜け部分などに設置すると、家の中が周囲から見えてしまう可能性がある

 

などのデメリットもあります。

 

 

 

2.すべり出し窓

すべり出し窓

すべり出し窓とは写真のように、窓の上部を軸に外側にすべり出しながら開くタイプです。

風通しが良く掃除がしやすいなどのメリットがあり、狭いスペースにも取り入れられます。

人が出入りできないサイズの窓もあるため、防犯面でも優れているでしょう。

 

注意点としては、

 

・開けている状態で雨が降ると、窓の内側まで濡れる(掃除の手間が増える)

・強風にあおられ窓が勝手に閉まる可能性もある

・窓の大きさによっては、子どもの落下事故に繋がる

 

などが挙げられます。

 

 

 

3.片上げ下げ窓

片上げ下げ窓

片上げ下げ窓とは、下窓を縦方向にスライドして開閉できるタイプです。

欧米で見かけることが多いタイプでしたが、最近では日本の住宅にも取り入れられるようになりました。

 

「片上げ下げ窓」「両上げ下げ窓」「バランス上げ下げ窓」と、3種類ある上げ下げ窓の中でも安価で気密性も高い点が特徴です。

 

しかし、開閉しにくい点や開閉範囲が狭く換気効率があまりよくない点はデメリットでしょう。

 

窓の構造上、どうしてもカーテンのデザインが限られているため、インテリアコーディネイトで悩む可能性もあります。

 

そして、場所も開閉や掃除のしやすさを考えると、地窓や高窓への設置はやめましょう。

 

 

 

4.引き違い窓

引き違い窓

引き違い窓は、2枚のガラス戸をスライドさせ開閉するタイプです。

 

左右どちら側からも開くことができ、換気性に優れています。開口部が広いため。

 

より多くの光を取り込むことも可能です。引き違い窓の下部分が床まである「掃き出し窓」は、掃き掃除もしやすく開放感もあります。

 

デメリットは、

 

・開口部が広いため断熱性が低い

・空き巣や泥棒に入られやすい

・自然災害が発生した際に、物が飛んでくると割れる危険性がある

・窓が大きくなるほど、開閉の際に負荷がかかる

 

などが挙げられます。

 

 

 

5.4枚引き窓

4枚引き窓

4枚引き窓は、名前の通り4枚のガラス戸が左右にスライドし、開閉するタイプです。

 

中央部分を開けたり左右どちらかを開けたりと、自由に開閉する場所を変えられます。

ガラス戸4枚分の広さがあるため、光も十分に取り込めるでしょう。開放感や風通しの良さも特徴です。

 

デメリットは、

 

・スライド式のため隙間ができ、気密性が下がる

・断熱性が低い

・外側の掃除がしづらい

・レール部分が汚れやすい

・設置場所によってはプライバシーの心配も

などが挙げられます。

 

自身の理想と機能性を考え、高断熱高気密な住宅を建てましょう。

 

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