一級建築士 つるみーの     家づくりコラム

2020.08.15

家を建てる前に知っておくべきこと

住宅の耐震、断熱性能の目的 家を建てる前に知っておくべきこと10

住宅会社選びを難しくしている性能のこと

家を建てることを考え始めたとき、誰しも頭を悩ませるのが性能や仕様の話。

「弊社の建てる家は、今の暮らしよりも安心で、快適ですよ!」

なんて言葉を、訪問したどの会社にも言われて困ったなんて話も少なくありません。

この言葉の真偽はどうなんだろうか。

専門家目線で言えば、半分は本当で半分はウソかもしれないといったところです。

 

本当の部分は、今家づくりを考えている世代の築数十年の住まいが多く、その間に耐震や断熱の技術が高度化している点です。

また、賃貸のアパートであれば、戸建て住宅よりも性能が低いことが多い。

そのため、これから建てる新築住宅は、過去の住まいよりも安心で快適なのは間違いありません。

 

一方で、半分ウソかもしれないというのはどういうことでしょうか。

それは、耐震や断熱にはレベル差があるからです。

過去との比較では優れていても、今の時代で会社比較をしたときに、大きな差があります。

しかし、それを理解するには専門性が必要で、家づくりに関する勉強が必要不可欠です。

性能、仕様全て100点満点を目指せば、コストの壁にぶち当たります。

そこで大切なのが、性能アップ、仕様アップの目的を知ること。

 

今回は、家の性能、仕様に関する話で頻出する「耐震、断熱、機能性、デザイン」の4項目について、それぞれの目的と効果について整理します。

そこで、何にコストを投資すれば何が得られるのか理解し、自分たちの価値観に合った最適な選択ができるようになることを目指していきましょう。

 

 

命と財産を守る耐震性能

耐震性能の目的は、命と財産を災害から守ることです。

日本は地震大国と呼ばれ、世界で起きるマグニチュード6以上の地震の約2割が日本国内で発生しています。

石川県や富山県は、大きな地震は少ないものの地震の可能性を秘めた断層地帯がいくつかある。

これら地震のリスクに対して、建物が倒壊しないようにと国が基準を設けています。

それが、耐震等級です。

 

・耐震等級1が、建築基準法以上で、震度5で損傷しない、震度6強から7で倒壊しない基準。

・耐震等級2が、長期優良住宅の基準で、耐震等級1の1.25倍の強度程度。

・耐震等級3が、耐震等級1の1.5倍の強度程度。

 

等級が上がれば上がるほど、当然コストは上がります。

また、北陸地方は雪が降る地域なので、積雪荷重の検討が必要です。

そのため、耐震等級3を目指す場合、間取りの制限が出てくる可能性が高い。

目指すとすれば、耐震等級2が現実的と考えられます。

 

耐震は、地震の力に真っ向勝負で耐えるのに対して、近年は制震という考え方が普及しつつある。

制震とは、壁の中に油圧式や摩擦式の制震ダンパーという装置を入れ、地震の揺れを吸収し和らげることで、耐震壁の損傷を少なくすることを指します。

住宅会社の中には、標準仕様として取り入れている会社も増えてきました。

標準仕様に入っていない会社でも、希望すれば取り付けてくれるのでご相談してみましょう。

 

 

健康と快適さを守る断熱性能

断熱性能の目的は、健康と快適さを守ることです。

寒さは万病のもとと言われるように、寒い家は健康リスクを抱えています。

英国保健省年次報告書 (2013.3)では、温度に対して下記のようなリスクがあると発表されている。

 

21℃:健康な温度

18℃:健康リスクが崩れる温度

16℃:呼吸器系疾患に対する抵抗力低下

9~12℃:血圧上昇、心臓血管疾患のリスク

5℃:低体温症を起こすリスク

 

このように、室温と健康リスクには一定の相関関係があります。

勘違いしやすいことですが、断熱性能を高めるということは、室温を維持する力が高まることを意味する。

つまり、冬は暖房で暖められた空間の室温が下がりにくく、夏は冷房で冷やされた室温を上がりにくくする能力です。

そのため、断熱性能を高めると一年中快適な生活環境にすることができます。

 

また、断熱性能が高いことで、冷暖房の負荷が小さくなり、電気料金が安くなる。

断熱性能を高めた家は、初期費用としての工事費が高くなるけど、住宅ローン完済までのスパンで考えると光熱費の差額で原価回収ができる投資とも考えられます。

長期的な視点で考えて、断熱性能を選ぶのが良いでしょう。

 

 

効率化により時短になる機能性

機能性の目的は、効率化による時間短縮です。

共働き家庭が増えている時代に、家事分担や家事負担の軽減は必要不可欠。

そこで技術とアイデアで、家事の効率化を図り、時間短縮をすることが求められています。

 

技術での時短は、AI家電や食洗機等です。

スマホのアプリからボタン一つでロボット掃除機が動かせたり、簡単にすすいで食洗機に入れれば乾燥まで自動でしてくれたり、非常に便利な機器が増えています。

数万円以上なので安い買い物ではありませんが、1日10分家事負担が軽減できれば1年間で2日半の時間を手に入れられる。

正に技術に投資し、時間を買うようなイメージです。

 

アイデアでの時短は、家事動線や身支度動線の整理です。

例えば、近年サンルームの隣にファミリークロークという部屋を希望する方が増えています。

従来、脱衣室で脱いだ服を洗濯し、サンルームで干してから、各個人の部屋に片付けに行く流れでした。

そうなると毎回階段の上り下りが必要になります。

もしファミリークロークがあれば、仕事着や制服等のよく着る服は隣に片付け、お休みの日に着る服だけ各個人の部屋に片付けることになり、家の中での移動時間が削減できる。

1日5分や10分ぐらいと考えるかもしれませんが、この積み重ねが暮らしを楽にしてくれます。

もちろん、通常よりも部屋が増えたり、動線が増えたりするので面積増によるコストアップにもなるかもしれません。

しかし、どこにも売っていない時間を手に入れられると考えると、投資価値があるはずです。

 

 

総合的な提案力のデザイン

デザインと聞くと、「かっこよくすること」なんてイメージする方が多いでしょう。

しかし、家のデザインはお客さんの趣味趣向を映すようなものと考えられます。

では、デザインの目的はなんだろうか。

 

デザインの目的は、お客さんの要望に答えながら住み心地の良い暮らしを提供することです。

つまり、耐震や断熱、機能性を満たしながら、お客さんの求める見た目で、それを予算内にまとめる総合的な提案力とも言えます。

良質なデザインにするには、お客さんの潜在的な要望まで引き出すヒアリング能力や、それに対して適切な提案が必要です。

壁にタイルを張りたい、天井に木を張りたいはコストをかければどこでもできます。

大事なのは、総合的にまとめる力なので、この辺りは住宅会社の担当者と打合せをし、コミュニケーションを取りながら選んでいくといいでしょう。

 

 

優先順位をつけて取捨選択できるかがポイント

「耐震、断熱、機能性、デザイン」の4項目について、それぞれの目的と効果がわかったでしょうか。

家族で話し合って、4項目の優先順位を考えてみよう。

そうすることで、自分たちの求めるものが何か明確化していきます。

もちろん、選び難くて2位が2つになってしまったでも大丈夫です。

その場合は、バランス重視の会社選びをすることで、比較的多くの理想が叶います。

自分たちの要望を知り、適切にコストの投資先を選び、満足のいく家を建てましょう。

 

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