本記事は令和6年能登半島地震を機に再考すべき、家づくりにおける自然災害対策についてです。
前編は建物側の耐震対策でしたので、後編は災害対策に有効な土地探し、地盤対策について解説。
地震、火災、液状化現象、土砂災害、水害(洪水、津波)とある中で、建物側の住宅の構造で対策できることと、土地探しによる地盤対策でできることに分かれているのがポイントです。
どちらか片方が完ぺきだからリスクが最小限になるわけではありません。
良いものを選ぼうとすればコストがかかるので、バランスを取るために正しいリスクと対策を理解してください。
安全な土地探し
発生し得る災害で対策は異なる
令和6年能登半島地震では、地震をきっかけにした複数の自然災害が発生しました。
これら全てを地震と一括りにして考えてはいけません。
自然災害の種別によって対策が異なるからです。
令和6年能登半島地震では、主に5種類の被害が発生しました。
・地震による直接的な建物の損傷
・火災
・液状化現象
・土砂災害
・水害(洪水、津波)
地震による直接的な建物の損傷
地震による直接的な建物へのダメージは、前編で解説した耐震性能に関わることです。
構造計算をしっかりし、安全性を確認することで確証は取れます。
ただし大きな震災でよくあるのが、本震は耐えたけど余震で半壊や倒壊になるケースです。
壁や屋根の中に隠れて見えない構造部材にダメージを受け、本来の耐震性能を有していない可能性があるため、近隣で大きな被害があった場合は専門家に確認してもらう方がいいでしょう。
令和6年能登半島地震においては、数年続いていた能登沖の群発地震で損傷していた状態に大きなエネルギーがかかり倒壊したとも考えられます。
火災
火災対策は3つのポイントがあります。
・出火しないこと
・出火しても近隣に延焼しないこと
・近隣の火災から延焼しないこと
火を出さない、広げない、もらわないために建物側と土地側の2つの対策が必要です。
建物側では、省令準耐火構造を採用する方法があります。
省令準耐火構造とは、勤労者財産形成促進法施行令の基準を定める省令に基づく準耐火構造であり、建築基準法の準耐火構造とは異なることに注意が必要です。
具体的には以下の通り定められています。
・外壁及び軒裏が防火構造であること
・屋根を不燃材料でつくり、または葺いたもの、あるいは準耐火構造であること
・室内に面する天井及び壁は通常の火災の加熱に15分以上耐える性能を有すること
・その他の部分は防火上支障のない構造であること
省令準耐火構造を採用することで火災に強いだけではなく、火災保険料が安くなるメリットがあります。
火災保険において建物は、M構造(マンション構造)、T構造(耐火構造)、H構造(非耐火構造)の3つに分類され、M構造が最も保険料が安く、H構造が最も保険料が高いです。
一般的な木造住宅はH構造に分類されますが、省令準耐火構造はT構造に分類され保険料が安くなる傾向があります。
また、土地側での対策は富山県の砺波平野にある散居村のように、隣地から十分に距離を取れる土地を選ぶといいでしょう。
散居村の成り立ちは諸説ありはっきりしていませんが、説の一つには「加賀藩が防衛上の理由で家屋を点在させるように命じた」というものがあります。
散居村は少し大げさですが、隣近所からのもらい火をしないよう十分距離が取れる土地が理想的です。
令和6年能登半島地震で発生した輪島の朝一通りでの火災は、建物が密集したエリアで延焼を繰り返したため、あれほどの被害規模になりました。
建物と土地の双方で「火を出さない、広げない、もらわない」対策を考えていきましょう。
液状化現象
液状化現象とは、ゆるく堆積した砂の地盤に強い地震動が加わることで地層自体が液体状になる現象です。
具体的な被害は、マンホールの隆起、地盤の陥没、砂や水の吹き出しがあります。

地震対策
液状化現象を防止するには、土地探しで気を付けるしかありません。
建物を建てる際、地盤が弱いと地盤改良をしますが、液状化現象は地盤改良範囲より低い部分の影響で発生する可能性があります。
だから、液状化現象が発生しやすい地盤の土地を選んだ時点で、大きなリスクがあると認識すべきでしょう。
このような土地を避ける方法の一つに、国土地理院が公開している地図から地形分類を把握することがあります。
液状化現象が発生しやすい地形は、埋立地や旧沼地・旧池、河川沿岸等です。
発生率については「若松 加寿江・先名重樹・小澤京子:2011年東北地方太平洋沖地震による液状化発生の特性」という研究があり、下記図のような発生率の高い地盤の傾向はつかめます。

このように過去の研究データ等から推測し、安全性の高い土地を選ぶことが予防策になるでしょう。
ただし地盤に関しては専門性が非常に高く、把握しきれていない住宅会社の方も少なくありません。
発生確率であって、絶対に発生しないという保障もないので、自分たちでも調べられるだけ調べて、リスクを把握して生活していきましょう。
土砂災害
土砂災害についても、液状化現象同様に土地探しで気を付けるしかありません。
土砂災害が発生しやすい場所は、あらかじめハザードマップに記載されています。
全国版だと国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」で確認するといいでしょう。
他にも自治体によってがけ地条例を設けており、条例に引っかかる土地は平地よりはリスクが高いと考えられます。
しかし、これらで完璧に土砂災害から暮らしを守られるわけではありません。
まとまった土地を作るにあたって造成工事というものが必要ですが、そこで切土と盛土という2つの手法があります。
・切土:高い所の土砂を削り取り、平らな地盤面や法面を形成すること
・盛土:低い地盤や斜面に土砂を盛り上げて平坦な地表を作ること
地盤面のつくり方から、人工的につくる盛土のほうが土砂災害のリスクは高いです。
もし考えている土地の造成手法を聞けるのであれば、切土か盛土なのか聞くこともリスク管理の一つでしょう。
令和6年能登半島地震において、震源地から100km以上離れた金沢で土砂災害が発生しました。
ハザードマップやがけ地条例、切土か盛土かといった視点で被害があった場所を確認すると、どれか一つ以上に該当したところに被害が起きています。
最大のリスク管理は平地を選ぶに限りますが、もし山間や高低差の大きいエリアで土地探しをする場合は、土砂災害リスクを確認してください。
水害(津波)
水害には大雨による洪水、地震による津波があります。
どちらも通常の水位よりも高い位置に水面がきてしまい、家屋に被害を与えるのが特徴のため、液状化現象や土砂災害と同じように土地探しでの対策が必要です。
これらの確認方法として有効なのが、やはりハザードマップになります。
ハザードマップを見て、洪水や津波の被害を受けない場所を探しましょう。
何も影響がない場所が限られていて、改めて日本は災害大国であると認識させられます。
ある程度の対策を施すことで、洪水時に想定される浸水深さが0.5m未満のエリアは許容範囲内と考えてもいいでしょう。
なぜなら床下浸水と床上浸水では、被害の大きさが異なるからです。
床下浸水の場合は、基礎内部の水をポンプ等で抜いて、サーキュレーターで乾燥させることで修繕できます。
しかし、床上浸水となると柱や床材に水がつき、乾燥させるために部分的な解体が必要です。
加えて家財にも被害がでるので、修繕コストがぐんとあがります。
また基礎の構造を工夫することで、床下浸水のリスクを軽減させることができるでしょう。
住宅の基礎の高さは、地面から400mm程度が一般的です。
その上に柱と同じ寸法の105mmまたは120mmの土台が伏せられます。
一般的に基礎は通気が必要なので、写真のような通気口が設けられます。
洪水が起きた時、通気口から基礎内部に水が入って、床下浸水になってしまいます。

近年、通気口の代わりに城東テクノのキソパッキンを利用する会社も多いです。
画像の通り、400mmの基礎の上にキソパッキンを伏せて、その上に土台を伏せる構造となっているため、400mm程度までは水が入らない構造になります。

津波については、木造住宅では水圧に耐えられないだろうから、建物側での対策は難しいでしょう。
対策は津波の影響を受ける可能性のある土地を避けるしかありません。
東日本大震災以降、安全対策として電柱に海抜が表示されています。
土地探しの際、現地で確認してみてください。

水害対策としては、
・水辺や海辺の土地を選ばない
・水辺や海辺を選ぶ際は海抜のなるべく高い場所を選ぶ
これらに注意して土地を選んでいきましょう。
リスクの低い暮らし選びが大事
自然災害は多種多様で、その対策もそれぞれ異なります。
大きな災害が起きた時に、発生した後にどうするかという防災対策が報道されますが、最も大事なのはリスクの高い場所に、リスクの高い建物を建てないことです。
家の構造や土地選びでできるリスク軽減策もあります。
もちろんリスク軽減策にはコストがかかってしまうかもしれませんが、保険と同じです。
災害は起きない方がいいですが、起きてからできる選択は限られているので、事前に保険をかけて準備をしておくに限ります。
もし予算的な問題でリスクの高い選択しかできない場合は、発生したときの避難行動に徹してください。
明日は我が身のため、もしもの時のために正しい情報を知り、事前にできる対策を施し安心安全な暮らしを維持していきましょう。