以前もウッドショックの影響についてコラムを書きました。
ウッドショックとは、木材の需要と供給のバランスが崩れたことによる短期的な木材価格の高騰です。
主な原因は以下の3点。
- アメリカでの戸建て需要が高まったことによる北米産材の不足
- 世界的な輸送用コンテナの不足
- 慢性的な国産材需要の低下による急激な供給に対応できない
そもそも日本の住宅に使われている木材の6割は、北米を中心とした輸入材です。
この状況は1964年の輸入自由化による価格競争に、国産材が負けたことがきっかけ。
以後、減産体制が続いています。
木は切ってすぐ使えるわけではなく、自然乾燥か機械乾燥しなければなりません。
ウッドショックのような短期間の状況変動に対して、自然乾燥を待つ時間も無ければ、機械の数も限られているため、急激な増産は難しいでしょう。
では、アメリカ以外から輸入すればいいのでは?と考える方もいるでしょう。
しかし、コロナウイルスのロックダウンにより、港で働く人が少なくなり、輸送コンテナが港に留まったまま動けずにいます。
このような八方塞がりの状態のため、現存している木材が短期的に価格高騰しているのです。
このような状況下で、どのように家づくりをしたらいいのでしょうか。
家づくりの期限があるかで判断が変わる
まず、ウッドショックはいつまで続くかわかりません。
長期化すると言う方もいれば、短期的なものと言う方もいます。
おそらく、コロナウイルスをきっかけとした需要の変化、労働状況の変化に起因しているため、コロナの状況とある程度関連すると考えられるでしょう。
そのため、コロナ前の世界情勢に戻れば、材木の需要と供給のバランスが取れるはずです。
でも、それがいつになるかは誰もわかりません。
だから家づくりを進めるべきか、待つべきかについては、いつまでに建てなければいけないという期限の有無によって変わります。
子供の出産や入学、転職や転勤など、期限がある場合は急ぎましょう。
契約しても木材の入荷待ちで、着工時期が不透明になってしまうかもしれません。
しかし、契約した順番に着工となるので、早めに順番に並んでおかないとどんどん先送りになってしまいます。
もし期限がない場合は、状況を静観して機をうかがうのもありです。
ウッドショックで価格はどうなっているのか
2021年春、アメリカの木材市場では、1年前と比較して4倍の先物価格を記録しました。
その影響を受け日本の市場では、樹種によっては1.2~1.5倍に価格が上昇。
建物に占める材木の費用の割合が約1割のため、
- 2000万円の家:40~100万円のコストアップ
- 2500万円の家:50~125万円のコストアップ
- 3000万円の家:60~150万円のコストアップ
と考えられます。
工事費に対して5%の価格上昇は覚悟しておきましょう。
ただし、状況が長期化した場合は材木不足が深刻化するため、どうなるかわかりません。
また、契約した住宅会社とのトラブルを防止するため、見積書の有効期限や契約条件などを事前に確認しておくのがいいでしょう。
ウッドショック後に建てたらお得なのか
では、ウッドショック後に住宅の価格は元通りになるのでしょうか?
おそらく、住宅の価格は元通りの金額に戻りません。
近年、建設業全体で職人さんの高齢化に伴う人材不足が起きています。
さらに、年々高くなる原油価格の影響で、ありとあらゆる材料の価格が上昇。
住宅設備機器メーカーは、毎年のように商品価格改定の情報を掲載しているぐらいです。
つまり、ウッドショック後に材木の価格は適正化しても、人件費や材料費が高騰するため、元通りにはならないと予測できます。
こちらもウッドショック同様、世界的な社会情勢に左右されるため、いつがお得か断言できません。
建てたい時が、建てるタイミングとしか言いようがないでしょう。
ウッドショック中の家づくり対策3選
では、今後どのように家づくりを考えていけばいいのか。
3つの方法をご提案します。
1.なるべく早く契約する
注文住宅の場合、契約してから材料の手配をします。
契約した順に着工の段取りが行われるため、なるべく早く契約して順番に並んでおくのが先決。
おそらくウッドショックの渦中で、順調に着工にこぎつける唯一の方法です。
この場合、いつまで見積書の金額が有効なのか必ず確認しておきましょう。
ウッドショックが深刻化すると、今以上の材木単価の上昇もゼロではありません。
もし価格上昇で追加金額が出る場合、どちらが負担するのか確認して下さい。
後々のトラブル防止になります。
2.建売住宅や中古住宅、リノベーションに切り替える
注文住宅が難しいと感じたのであれば、建売住宅や中古住宅、リノベーションに方針変更するのも有りです。
この場合、注文住宅よりは様々な制限が強いられるため、向き不向きがあるでしょう。
しっかりと検討して下さい。
もし、中古住宅のリノベーションをする場合、使う木材の心配は新築ほど深刻ではありません。
ウッドショックの影響を受けているのは、主に構造材の柱や梁。
リノベーションで構造材を変更するのは、よっぽど傷みがひどいか、間取り変更による補強の時です。
当然、構造材の量が増えれば増えるほどコストに影響します。
また、下地を露わにするようなスケルトンリノベーションにすれば、断熱補強は十分に可能。
物件探しが難しく、リノベーションを得意としている会社を探すのは難しいかもしれませんが、満足のいく家づくりになる可能性は十分にあります。
3.状況が安定するのを待つ
3つ目の方法は、とにかく情勢が落ち着くまで待つ方法です。
ウッドショックの渦中では、どうしてもテキパキと動き、迅速に決断するスピード感が求められます。
各家庭の状況によって、また性格によって向き不向きがあるため、無理に家づくりを進める必要はありません。
ただし、いつ落ち着くのかわからず、建設業は職人不足と材料費高騰が続いているため、先行きが不安定です。
人生で最大級の買い物になるため、自分たちの納得のいくタイミングで考えていきましょう。