日本の断熱性能の基準がわかりにくい
どうして日本の家は夏暑くて、冬寒いのか?
それは先進国の中でも数少ない断熱性能に関する義務基準がないからと言われています。
更に、国が定める推奨基準も将来の義務になる予定の基準までしか示されておらず、どれぐらいが高いレベルなのか表現されていません。
(義務化に関する内容はこちらに詳しく書いてあります)
このような状態で断熱に力を入れている業界団体が推奨基準を作り、啓蒙活動を続けているのが実態です。
つまり、日本の断熱性能に関する基準がとてもわかりにくい。
どういった状態かと言うと、
「国が定める最高基準」
ユーザーの認識
→国が認めているぐらいだから、最高な断熱性能なのだろうな。
専門家の認識
→将来義務になる実質的な最低基準のことね。
このような認識の差が生まれています。
一方で業界団体が定める推奨基準は、国の基準という表現よりも権威性に劣り、認識されずらいのが現状です。
国が定める断熱等性能の等級制度
国が定める基準として、住宅の品質確保の促進等に関する法律(通称:品確法)の中で「住宅性能表示制度」というものがあります。
「住宅性能表示制度」は、様々な住宅の性能をわかりやすく表示することを目的とし、その一つに断熱等性能の等級がある。
現時点で定められているのが等級1から4になります。
- 等級4:平成28年に制定された基準(通称「28年基準」)に適合する程度のエネルギー削減が得られる対策を講じた住宅
- 等級3:平成4年に制定された基準(通称「4年基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
- 等級2:昭和55 年に制定された基準(通称「55年基準」)に適合する程度のエネルギー削減を得られる対策を講じた住宅
- 等級1:その他
ここで等級4というものが国が定める最高基準であり、2025年に義務化を予定している基準です。
具体的な数値はUa値(外皮平均熱貫流率)で定められており、全国を8区画に分けた地域区分によって基準値は異なります。
北陸においては5または6地域となるとめ、等級4はUa値0.87が基準値です。
等級4以上の基準の制定
2021年11月、国土交通省、経済産業省、環境省の3省が住宅・建築物の省エネ性に関する基準整備を進めるため合同会議を開催し、等級制度が大きく変わろうとしています。
業界団体である一般社団法人 20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会が推奨しているHeat20G2及びG3の基準を、等級制度の上位基準として設定しようと動き始めたのです。
公示予定は2022年3月。
実はそれ以前に、ZEH基準であるUa値0.60を等級5として定めるとパブリックコメントを出していました。
パブリックコメントの背景として、2050年のカーボンニュートラル、脱炭素社会を目指して住宅の省エネルギー性能をより一層向上させることを目的としています。
今回のG2及びG3基準をそれぞれ等級6と等級7に制定する議論も、その延長戦上だと考えられるでしょう。
G2やG3基準となると断熱性能のレベルが非常に高く、間取りや面積によっては一般的な壁掛けのルームエアコン1台で家中の冷暖房が可能となります。
また、等級制度という同じ物差しで測ることでユーザーへの誤解もなくなり、基準がわかりやすくなるでしょう。
少しマニアックな話かもしれませんが、家づくりの難易度を上げているのはこういったわかりにくさです。
興味のあることだけでいいので自分で調べて学ぶ姿勢が、家づくりを成功に導いてくれるはず。